春日大社(奈良県)が所蔵し、国宝に指定されている平安時代の太刀。
その金具部分(ツバや柄)に純金が使われていたことが判明しました。
これまでは金メッキと思われていたのですが、X線やCTスキャンなどで分析した結果、22~23金であるとのこと。
日本では弥生時代から鉄器や青銅器が作られていましたので、鉱石から金属を分離させるノウハウはあったようです。
しかし金や銀など”貴金属”といわれる金属類を分ける方法は、現代でも純度の高いメチルアルコール等など多くの化学薬品を使います。
金属は1000℃以上にならないと溶けないものが多いので、まずその温度に耐えられる容器がないと溶かしようがありません。
その上、コンピューター制御で温度管理をする炉があったわけでもないのに、融点が違う金属をどうやって判別していたのでしょうか。
先人の知恵と技術に尊敬の念を禁じ得ません。
純度の高い金を抽出する技術と、それを加工・彫金する職人さん達の力を結集した1000年前の一振りの太刀。
太刀とはいえ、儀式用に使われていたもので、鞘には琥珀やガラスをはめ込み、夜光貝を使用した螺鈿細工、金粉なども散らして、竹林の雀を追う猫が美しく描かれています。
これだけ贅沢な太刀を奉納するのは、それなりの身分の人であったと思われますが、誰だか分かっていません。
春日大社と縁があった摂関家・藤原頼長ではないかという説もあります。
頼長は子供の頃から猫が大好きだったからです。
猫が好きすぎて、神様へ究極の猫を奉納したのかもしれませんね。
この太刀は、春日大社国宝殿にて2016年10月1日~31日まで見ることができます。
秋の大和路、奈良公園の鹿さんだけでなく、究極の猫に会いに行きたくなりました。