遺伝子は、生物の構成要素(=タンパク質)の設計指示を出すところです。
設計図に基づいて、きちんとタンパク質を積み上げているか・・・・(いま話題のどこかの市場では、この機能が欠如していたようで・・)
市場はともかくとして、”ヒト”という極めて複雑な機能を持った生物を構成するには、さぞかし多くの遺伝子を必要とするだろうと想像に難くありません。
実際、ヒトゲノムの研究をしていた専門家たちの間でさえ、55,000個くらいだろうという意見が大勢でした。
中には150,000個と予想した人もいました。
この予想の基準となったのは、人より一足先に判明したマウスの遺伝子数でした。
彼らの遺伝子は23,000個でした。
そして、原始的な生物の代表である線虫が、20,500個。
それを基準に考えれば、大きな大脳を持ち、話したり、パソコンを発明したり、宇宙にも行ける”ヒト”が5万個くらいの遺伝子を持っているだろうと予想していたわけです。
ところが、判明した遺伝子数は21,000個。
線虫とほとんど変わらなかったのです。
もっと驚いたのが、ミジンコが31,000個。
植物の代表・小麦は26,000個。
昔、初歩的なミスをした時に「お前の頭はミジンコ以下か?!」と叱咤する上司がいましたが、・・・まさにそうでした。。。。
そして植物より動物の方が、何かと高等な生物と思われがちです。
しかし遺伝子数は小麦以下だっただけでなく、ヒトゲノムのサイズは稲の半分であったことも判明。
それを知ってしばらくは、パンやご飯を食べるたびに不思議な気分でした。
何を持って生物として優れているかを計るのは、非常に難しいことが分かります。
しかし遺伝子だけで生物は成り立っているわけではありません。
生物には膨大な量の”微生物”が共存しています。
微生物とは、細菌・菌類・ウィルス・古細菌のことです。
これらも、当然遺伝子を持っていて、だいたい一人あたり440万個にもなります。
つまり人体は、”ヒト”の遺伝子21,000個と微生物の遺伝子440万個で出来ています。
人に限らず、どんな生物も微生物と共存しています。(もし良かったらこちらもご参照ください)
『ほとんど微生物の遺伝子じゃない!?』
そうなんです。”ヒト”としての遺伝子はたった0.5%。
この微生物の集合体の心臓部が盲腸です。
そして盲腸から垂れ下がっている10センチにも満たない虫垂が、よく炎症を起こした時に手術するところです。
この虫垂、≪種の起源≫で有名なダーウィンが、著書≪人間の由来≫の中で『ヒトの食生活の変化によって退化した痕跡器官』と記したことから、『役に立たない器官』『取っちゃっても問題ない』という説が100年以上常識であり続けました。(続きを読む)