少し涼しくなると、ミルク多めのコーヒーや紅茶が美味しく感じます。
ヨーグルトやチーズ・乳酸菌飲料など牛乳は一年を通して身近な存在です。
牛乳は、母牛の血液が乳腺を透過することで生み出されます。
血液⇒お乳。
これを人工的に作ろうとすると、最新科学技術を駆使しても、高さ2メートル以上の大がかりな機械が必要だそうです。
それをあんな小さな乳腺でやり遂げていることの不思議・・というより神秘に近いものを感じます。
それだけに、母牛の健康状態(血液状態)が、牛乳の質に影響します。
そこで『タンパク質が豊富で、出来ればビタミンやミネラルもたっぷりの牛乳にしたい・・』と考えた人がいたのも当然でしょう。
そこで餌の研究が始まりました。
冷静に考えれば、草だけを食べてあの巨体を維持している牛さんです。
草こそが彼らの生命を支えているのですから、それ以外の餌を与えるのは、何らかの問題が予想できます。
牛や馬のお腹がふくれているのは、”メタボ”体型なのではなく、第一胃に相当量の微生物を飼っていて、それが草を発酵・分解して消化を助けているからです。
この微生物はお役目を終えると、第二胃~第四胃で分解され、アミノ酸となって下部消化管から吸収されます。微生物自体が、タンパク源となるのです。
このような代謝機能を持つ草食動物が草以外のものを摂ったら、胃腸のバランスが崩れるのは避けられないでしょう。
病気や加齢による機能低下を起こしている時は別として、本来持っている機能を”十分に使わない”ことは、”使いすぎ”と同様に問題を引き起こすことを想定しなくてはなりません。
生体の機能として、食事に異常事態が起こっても、最初はなんとか通常のバランスをとろうとします。
ましてや、お乳という子牛を育てるための最重要アイテムの”正常化”は優先されます。
そのため、摂った食事の各栄養素と血中濃度はダイレクトに比例しません。そして血中濃度と乳中濃度も必ずしも比例しません。
ビタミンAとB群、そして亜鉛・マンガンは、比較的乳腺を透過しやすいので、血中濃度が上がると乳中濃度も上がります。
ところがビタミンC、D、E、Kは透過しにくい。
また鉄や銅、カルシウムなどは、ホルモンの働きも影響しているので、血中に増えたからと言って簡単に乳中には現れません。
こうして牛さんの餌を調整することで栄養強化した牛乳を作るのは難しいと分かり、必要な場合は搾乳後添加して”加工乳”とすることになったわけですが、これも食事と健康の関係がよく見える実験データだと思います。