栄養素と免疫力が、密接に関わっているのではないかと注目されたきっかけは、11世紀~12世紀にヨーロッパ全土で猛威をふるったペストの流行です。
特に12世紀のイギリスでは、15回以上の飢饉→ペスト発生を繰り返し、低栄養が免疫に与える影響が確実視されました。
そのような経緯があったので、最初は何かが”不足”することの弊害の研究が先行しました。
しかし近年、人間の世界でも”メタボ”が問題視されているように、動物の世界でも栄養素の”過剰”による弊害が注目されています。
特に肥満や高脂質の食事を摂りつづけると、免疫力が落ち、感染症やガンに罹りやすくなることが判明しています。
また動物別に特徴的な傾向も分かってきて、ラットはマラリヤに、鶏は呼吸器の感染症にかかりやすい。
犬ではサルモネラ菌に対する抵抗力が下がり、合併症の罹患率は上がります。そしてジステンパーに罹った場合、病気の進行が早まります。
また最近特に犬猫で問題になっている糖尿病。
これは様々な原因がからみあっているので、単純に脂質の摂取制限をすれば問題が解決するわけではありません。
ただ脂肪細胞が肥大すると、その細胞膜のインシュリンレセプター(インシュリン専用の受付窓口)がインシュリンをキャッチする力が低下します。この状態は高血糖につながります。
もう踏んだり蹴ったりです。
低脂肪食でも免疫力が落ち、高脂肪食でも落ちる。
また脂質に限らず、個体の代謝能力には差があるものですから、『これが正しい数値』というものを明示するのは非常に難しいのが現実です。
ただ、ひとつ確実に言えるのは、『脂質○㎎』というような”数字”だけに惑わされてはいけないということでしょうか。
これは他の栄養素にも言えることですが、『糖質○g』『ビタミン○㎎』というのは非常に分かりやすい目安です。
ただその栄養素がどんなもので構成されているのか、”質”を見極めないと損をしてしまいます。
脂質の場合ですと、過酸化脂質が多く含まれたもので構成されていたら、脂質の恩恵は受けられません。酸化が最小限に抑えられた新鮮なオイルや魚がオススメです。
また意外な素材として昆布があります。
昆布は3%近い脂質を含んでいます。
ミネラルや繊維質を多く含むことは有名ですが、非常に質の高いタンパク質を含んでいることはあまり知られていません。
WHO(世界保健機構)でも、『人間のアミノ酸組成に近い理想のタンパク源とされる牛肉に匹敵する』と昆布を高く評価しています。
海藻類全般のタンパク質含有量は、15%ほどですが、その質の高さは食材の中でもトップレベルです。