名作音楽の中の猫
- 青い森工房
- 2016年8月30日
- 読了時間: 2分
更新日:2021年2月13日

チャイコフスキー晩年の作品にピアノ曲『18の小品』(Op.72)があります。
文字通り数分から長くても7分くらいの小曲の集まりですが、12番目に『L'espiegle』という曲があります。
チャイコフスキー自身、ロシア語で題名や曲のメモなどを書いているのですが、楽譜がフランスで出版されたため、上記のようにフランス語で紹介され、基本的にそこから日本語に訳されています。
そのため、この曲は『いたずらっ子』とか『いたずら女の子』と紹介されているのですが、どうも本人は子猫が戯れている姿を曲にしたらしいのです。
「たかが2分ばかりの小曲で、子供か子猫かたいした差じゃないじゃないか」と思うなかれ。

最初にその”差”が気になったのは、ロシア人ピアニストの演奏を聴いた時。
スピードの緩急のつけ方が独特で、同じメロディなのに違う曲のような印象を持ったのです。
題名が違えば、演奏者が譜面から受けるイメージも変わるのは当然でしょう。
ロシア系かそれ以外か、どちらの演奏がしっくりくるかは、好みが分かれるかもしれません。
しかしこの小さな曲は『子猫か子供か』どころではない、チャイコフスキー先生も予想だにしなかったであろう展開を遂げました。
それはチャイコフスキーの代名詞とも言えるバレエ≪白鳥の湖≫の中でプリマバレリーナが演じる黒鳥のソロに採用されたのです。
初演に大失敗したこの作品を再編成した際、新たに加えられ、それが成功したからこそ今に伝わる名作となったのです。
子猫達がじゃれたり、転がったり、追いかけっこする様を表現した曲が、小悪魔的な魅力で王子様を惑わす黒鳥の曲になったのです。
100年以上世界中のバレエ界を支えてきた名作の中に、猫の存在があったとは・・・。
これもネコノミクスの一つでしょうか?