※当記事は、書かれた当時(2020年2月6日)の状況や情報を基に書かれたものです。その後状況が変化、またウィルスに関して新たな情報が入っている可能性がありますが、発生初期段階のリアルな記録を残す為、記事の編集・削除をしておりません。どうかご了承下さい。最新情報は厚生労働省、各医師会及び獣医師会などの公式サイトにてご確認下さい。
連日新型コロナウィルスに関する報道が流れています。
『新型』ですので、分からない部分が多いのは確かですが、報道で知る限りでは、子供の感染者が少なく、インフルエンザ脳症のような重篤な合併症を起こしたケースは出てきていません。
ただ感染の発端が市場で売られていた野生動物である可能性が指摘されたことから、
動物からうつる⇒動物は危険⇒犬猫などのペットも危険
というような根拠のない噂が広まり、過剰な反応が起きているとの情報があります。
海外発の話なので、真偽のほどは確認できませんが、その過剰な反応の数々は嘘であって欲しいと願うばかりです。
一つ重要な情報をお伝えすると、動物のコロナウィルスがダイレクトに人間に感染することは基本的にありません。
豚のコロナウィルスは豚同士で感染し、猫のコロナウィルスは猫同士で感染します。
そのためペットが、例えその動物固有のコロナウィルスを保有していたとしても、それが人間に感染することはありません。
幸い日本国内で、間違った情報によるパニックは起きていませんが、この部分は是非強調しておきたいと思います。
猫伝染性腹膜炎ウィルス(FIPV)
猫白血病ウィルス(FeLV)猫免疫不全ウィルス(FIV)と並び、猫の三大感染症の原因となる『猫伝染性腹膜炎ウィルス』はコロナウィルスの一種です。
このウィルスは実は分かっていないことが多く、発症したら対症療法しかありません。
発症するとその名の通り、腹膜炎を起こすので、発熱して腹水や胸水が溜まります。
この症状を”ウェットタイプ”と呼びますが、発熱と共に腎臓や肝臓にしこりができ、虹彩炎などの目の炎症、あるいは脳炎を起こす”ドライタイプ”と呼ばれる症状の時もあります。
初期段階では、どちらも他の病気と紛らわしいのですが、発症したら残念ながら致命的な進行をたどります。
ただこのウィルスは、非常に感染力が弱いのです。
そのため猫から猫へ感染することはないとされています。
じゃあ、どこから感染するのか?
そこでキーマンならぬ、キーウィルスとなるものに『猫腸コロナウィルス』というものがあります。
こちらもその名の通り、下痢などの腸炎が主たる症状で、人間で言えば”お腹の風邪”と言われる程度で、ほとんど場合致命的な経過をたどることはありません。
つまり病原性は高くないのですが、猫から猫へ簡単に感染するという特徴があります。
まとめると
猫伝染性腹膜炎ウィルス(FIPV) 感染力:低い 病原性:高い
猫腸コロナウィルス(FECV) 感染力:高い 病原性:低い
この猫腸コロナウィルスが、猫の体内で変異して猫伝染性腹膜炎ウィルスになるとも言われています。
この二つのウィルスは、非常に顔つき(遺伝的特徴)が似ているため、検査してもどちらかを判断するのは困難です。
そのため事実上、症状の進行具合で診断が下されます。
感染前の変異ではなく、体内に入った後で変異が起こるならば、そのきっかけは、猫の体の中に必ずあるはずです。
変異が起こらなければ重篤化が避けられるのですから、そのへんの仕組みが早く解明されることを願っています。
犬コロナウィルス(CCV)
このウィルスに感染すると下痢や嘔吐など胃腸症状が出ます。
仔犬の場合は、命を落とすこともありますが、成犬の場合は症状が出ない(不顕性感染)場合もあります。
ワクチンはありますが、コアワクチンではないので混合されていない場合もあります。
発症してもほとんど治療がいらないケースもありますが、二次感染を防ぐために投薬治療をすることもあります。
こちらも猫腸コロナと同様、人間の世界の”お腹の風邪”レベルで済むことがほとんどです。
コロナとインフルエンザ
いわゆる”風邪”と呼ばれる感染症の15%(通年平均)程度がコロナウィルスによるものです。
(秋~冬の流行期だと30~35%程度)
多くの方が、市販薬や街のクリニックで対処していると思いますが、時にこじらせて肺炎を起こす方もいます。
今回の新型コロナも、現時点のデータではそれと同じレベルに感じます。(個人的感想です)
感染者数や死者数が毎日増えていくのを見ていると、非常に不安になる方もいらっしゃるかと思いますが、この時期最も流行するインフルエンザと比べるとどうでしょう?
日本では毎年1,000万人が感染し、約1,000人の方がお亡くなりになっています。
アメリカなどは、2017年~2018年シーズンは4,500万人に感染し、61,000人が亡くなっています。
人口は日本の3倍ほどなので、感染者数は同じくらいですが、お亡くなりになる方が多いのは保険制度の違いからかもしれません。
ご存じのようにアメリカは国民皆保険制度ではないので、治療費や薬代が高額です。
そのため適切な治療が受けられない方もいらして、死亡率が高い可能性があります。
今年(2019年~2020年)アメリカでは、「大流行」と言われた昨年度を上回る勢いで流行しており、1月中旬にはすでに死者が8000人を超えています。
今年は特にB型が流行しています。
B型インフルエンザの特徴として、熱が38℃以上にならず37℃台にとどまることがあります。
その上胃腸症状が出ることがあります。
こうなるといわゆるコロナウィルスによる『お腹の風邪』とそっくりで、医師でもウィルス検査をしてみないと診断がつかないでしょう。
冒頭に書いたように、インフルエンザ脳症など重篤な合併症を引き起こす感染症流行国が身近にあるにも関わらず、アジアの一地域でさして重篤な症状も出ていない感染症に対して異常なまでの報道と政府の対応はどうしたものでしょう。
この風潮こそがパンデミックなのではないでしょうか。
(このウィルスに関して、我々に知らされていない情報があるのなら別ですが・・・)