残留農薬だけではない、遺伝子組み換え(GM)食品の問題
『遺伝子組み換え技術は、従来の品種改良と変わりません』
『遺伝子を組み換えることで、農薬を使わなくても作物を害虫から守ることができます』
という触れ込みでしたが、実際は従来の品種改良とは似ても似つかない過程を経て作られているし、農薬使用に至っては従来より強い農薬が必要になっているのが現実です。
冒頭の写真にある作物は、全て遺伝子組み換え品種が生産されています。
トウモロコシや大豆、米など主食になりうる食材=たくさん必要とされるものや
りんご、バナナ、いちご、トマトなど栽培に手間がかかる・病気になりやすい作物が目立ちます。
(※もちろん青森県は遺伝子組み換えりんごは栽培していません)
バナナに貼ってあるシールで分かる栽培方法
バナナなどはほぼ輸入品ですが、よくブランド名のシールが貼ってありますね。
あのシールに4桁か5桁の番号が入っていることがあります。
残念ながらバナナの主力輸入国であるフィリピンは参加していませんが、バナナに限らず、アメリカ・カナダ・ニュージーランド・南米・ノルウェーなどの農産物には、任意で表記してあることがあります。
ニュージーランド産のキウィなどのシールでも見ることができるかもしれませんが
4桁で3若しくは4で始まる番号⇒農薬・化学肥料を使用
5桁で8から始まる番号⇒遺伝子組み換え
5桁で9から始まる番号⇒農薬・化学肥料不使用。オーガニック栽培。
という意味です。
遺伝子組み換え作物とアンピシリン耐性菌の接点
実は耐性菌の中でも個人的に最も注目したのは、アンピシリン耐性大腸菌の分離率です。
アンピシリンとはペニシリン系の抗生物質で、効果のある細菌が広いので「とりあえず処方」には登場回数が多い薬です。
緑膿菌以外はだいたい使える上、比較的安全性が高く、犬や猫にも使いやすいのです。
犬猫が抗生物質を使う場面としては、腸炎や尿路感染、皮膚炎、耳や歯、目の炎症などありますが、どれにもたいていヒットするでしょう。
そのためこの薬が使えないとなると、ちょっと困るのですが、近年この薬は遺伝子組み換え作物の開発現場で多用されているのです。
関連ブログ⇒GM大豆と薬剤耐性菌の密接な関係
遺伝子組み換え作物に耐性菌が含まれる理由
遺伝子組み換え作物を開発する際、遺伝子が目指す細胞に組み込まれたどうかの目印に、このアンピシリン耐性菌を使っています。
つまり・・・遺伝子組み換え作物は年々増えていますが、最初からアンシピリン耐性菌も組み込まれているのです。
例えば家畜の飼料やペットフードも大豆は重要な原料の一つですが、外国産のものはほぼ100%遺伝子組み換えだと思った方が良いでしょう。
アメリカもカナダも非遺伝子組み換え大豆の作付け率は、たった数パーセントしかありませんから。
そのため動物の糞便から耐性大腸菌が出ても全く不思議ではありません。
むしろニワトリで40%近く、ブタ約30%、犬・猫で約50%というのは、思ったより低い比率だな・・と感じます。
ただ今後比率が上がってくる可能性がある耐性菌の一つだと思います。
今回の調査報告でもう一つ注視したのは、こういった耐性菌が薬剤の摂取だけでなく、一緒に飼われている動物同士で水平伝搬している点です。
糞便を介して伝搬していると考えられますが、これは今後
犬・猫⇒ヒト
ヒト⇒犬・猫
への伝搬ルートがどの程度あるのか、注意深く観察していく必要があると思います。
ヒト及び犬猫の治療の現場で共通してよく使われる、アンピシリン及び第1世代セファロスポリン(セフェム系)薬剤は、犬猫の腸内細菌のうち、いくつかの細菌が耐性率100%になっています。
よく使われるようになってきた第3世代セファロスポリン薬剤も、それに次いで腸内細菌類の耐性率が高くなってきており、非常に心配です。
このグループは飲み薬だけでなく、犬猫にもよく処方されるベストロンという名前の点眼薬・耳鼻薬などもあり、使えなくなると困ります。
この手のテーマを取り上げる際、いつも最後にお願いしていますが『薬を飲むな』という意図で書いているのではありませんので、治療に必要な抗生物質(抗菌剤)は医師・獣医師の指示通り、最後まで飲んで下さい。処方に疑問を感じる場合は、必ず医師・獣医師や薬剤師に相談し、自己判断での断薬は避けてください。
あくまでも遺伝子組み換え作物の問題や、薬に依存しすぎた健康管理を危惧しているのです。そして個体の病気としてみるのではなく、水資源、農業など広く見ていかなくては解決しないと考えています。
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