ワクチンが絶対唯一の感染防止策ではない
広い年代のワクチン接種が始まりました。
街の声や一部TV番組では、『ワクチン接種すれば感染しない』と勘違いしている(させてる?)報道も見受けられますが、あくまでも『重症化防止』が主体です。
麻疹や水疱瘡のように一回罹れば抗体ができるものと違い、コロナウィルスやインフルエンザ、アデノウィルスのような変異株や組み換え株が多いウィルスは、抗体ができていても全く罹らなくなるものではありません。
その証拠に”風邪”は一生のうち何度も罹りますよね。
実際、”風邪”で病院に行っても、今までインフルエンザ以外のウィルスの種類を調べることなどしていませんので、実際のところコロナウィルスやアデノウィルスがどのくらいの比率だったかはおおよそのデータしかありません。
また数か月続くだるさや味覚障害などの後遺症も注目されていますが、これまでインフルエンザなどでも同様の不調が確認されています。
ただ統計をとってないため、今回のコロナウィルスと比較して、どれほど多いか少ないかは分かりません。臨床医の間では「たまにそういうことあるよね」というような認識だったようです。
また海外から
「コロナウィルス感染後に糖尿病になる人が増えた」
という報告もありますが、これは本当にウィルス感染の後遺症でしょうか?
なぜなら特効薬がない今、治療にステロイドの大量投与が行われています。
ステロイドの大量投与(長期投与)によって、糖尿病並みの高血糖が起こることは医療者の間ではよく知られています。
そのため感染症後に糖尿病を発症した人の中に、どれだけ医原性の糖尿病がいるかは検証されていません。
元論文が探し切れていないので、本当は検証されているのかもしれませんが、ただ
「感染症の後、糖尿病が多発」
という報告だけがニュースになると、
「怖いよね」
という印象しか与えません。
感染することは悪いことばかりじゃない
後遺症が長く続いている方にとって、精神的にも感染症は辛いものに違いありません。
しかし感染することで、より重大な病気予防になるという生ワクチンのようなウィルスもあります。
これは動物の世界での方が研究が進んでいて、例えば空気感染するニワトリのリンパ腫があります。
リンパ種=いわゆるガンの一種で、それが空気感染するなんて大変な病気ですが、七面鳥などが罹るヘルペス1型に感染するとこのリンパ腫が発症しないことが分かっています。
※注:リンパ腫に感染しないのではなく、感染しても発症しない
これは今後、人間のガン予防のヒントになるかもしれないと、獣医学の先生方が研究していますが、こういったケースはいくつか判明しています。
世界は未知のウィルスであふれている
『動物由来の感染症は分からないことが多く怖い』
という論調も不安をあおることになっていると思いますが、コロナウィルスだけを見ても動物から人に感染する形に変異したものは、今回で8回目です。
他のウィルスや細菌などを含めたら、かなりの数になります。
つまり初めてではないし、それほど珍しいことでもないのです。
そもそも世の中は未知のウィルスの方が多く、例えば海水1㎖の中には1億個のウィルスが存在します。(深海なら100万個)
それらのほとんどがどんな性質で、病原性の有無なども分かっていません。
現在の研究環境では、病原性があるものでないとまず研究できないのです。
しかし今回のことでも分かったように、一見人間に関係ない動物のウィルスや細菌、あるいは病原性のない微生物の基礎研究がないと、世界中が右往左往することを実感したと思います。
合理化は致命的
「何につながるか分からない」基礎研究は、この20年著しく後退しています。
後退・・というより”崩壊”と言った方がいいかもしれません。
『大学にも経営感覚や収益性を考えさせる』というような目的で、2004年国立大学は『大学法人』になりましたが、これが基礎研究の崩壊につながっています。
法人化によって基礎運営費(国からの交付金)が毎年1%ずつ減らされ続けているのです。
こうなると企業から資金を投入してもらう共同研究を増やさないとやっていけませんが、企業が収益性を優先するのは当然ですから、どうしても研究分野に偏りが出て来ます。
このコロナの影響で、大企業でも経営が厳しくなった昨今、ますます「何につながるか分からない研究」に資金提供するような企業は出ないでしょう。
それならば猶更、国が資金を投入して、再び国立大学の基礎研究に注力するべきです。
基礎研究分野に、合理化や収益性を考えるなんて百害あって一利なしです。
こういう話って、誰に言えばいいんですかね。