欧州議会で大議論!
保存料、酸化防止剤のバックアップ剤、肉の変色防止など、食品だけでなくペットフードにも幅広く使用されているリン酸塩。
数年前、欧州議会で、この添加物の使用の是非が議論となったことがあります。
結果的にわずか数票差で否決。
欧州議会は、添加物の安全性を評価する機関ではありませんので、否決の理由も
『リン酸塩を使用しないことで多くの失業者が増え、大きな経済損失を招く』
というものでした。
この決定は、ある意味現代の世相を表していると思いました。
添加物の基準や、農薬の使用基準など、ヨーロッパは日本より厳しいことは有名で、ペットフードを選ぶ際もそれが購入動機になっている方は多いと思います。
一方で、政治的、経済的理由から、非常にシビアな判断を下すともあります。
地続きで、一本の川が数か国に跨ることも珍しくないため、特に環境問題や健康に関わることに関しては、厳しい基準を設けないと国家間で不均衡が生じます。
そのため食品添加物などの使用基準の見直しは日常的で、安全性に疑義が生じた場合
『とりあえず一定の結果が出るまで使用禁止』ということもよく起こります。
ただこれは”食品”添加物であって人間に使用されるものです。
ペットの食べるものは、家畜などの餌と同様”飼料”です。
しかも家畜に与える餌や医薬品に関しては、
その肉や生産物(乳や卵など)は食品として流通する=人間が食べる
のが前提のため、成分の残留や毒性については非常にシビアです。
特に
・成長を妨げるもの=肉量が落ちる、採乳量が落ちる等
・病気の原因となるもの=肉、または牛乳、卵などが取れなくなるもの
といった添加物や医薬品には素早く対応します。
しかし犬や猫の食べるものに関しては、メラミン(割れない食器などの原料になる窒素化合物)混入事件の時のように、大規模な健康被害が起こらないとあまり注目されません。
そのため我々製造者は、常に研究が必要で、
法的に使用可能=安全
という姿勢は取れません。
今回の新型コロナウィルスの対応を見ても分かるように、法的根拠と科学的根拠が一致しないことはしばしば起こるからです。
私たちは法律家でも政治家でもありませんので、生物的な根拠が最優先です。
そこで重要な根拠として、マウスやラットなど動物から得られる情報があります。
マウスとラットの違い
よく医薬品や食品添加物の安全性を確かめる実験の際、
『マウスに〇日間投与した場合に』
とか
『ラットに〇日間与えた場合に』
というような記載を目にしたことがあると思います。
どちらも言ってしまえば”ねずみ”なんですが、マウスはハツカネズミを改良したもので、ラットはドブネズミの改良型です。
そのためラットの方が体が大きいです。
(マウスは20~30g程度、ラットは300g~500g。個体によっては700gほどになるものも)
マウスやラットで実験するのは、小さくて繁殖力が強く、安定した管理がしやすいという点もありますが、遺伝子数が人間とほぼ一緒の上、遺伝子全体(ゲノム)がよく似ているからです。
人間にあってマウスにない遺伝子、またはマウスにはあるけど人間にはない遺伝子は1%以下です。
ま、その1%以下の部分が大きいとも言えますが、生物全体から見ると近しい仲です。
そのため試験管レベルの実験結果とマウス(またはラット)での実験結果では、根拠の重さが違うのです。
一億年前は同じ動物だった人間と犬
よく都合の悪い結果出ると
「マウスと人間では体の機能が違う」
「人と犬では違う」
という議論が出ます。
そりゃ100%同じというわけではありませんが、安全性を担保する結果や都合の良い結果が出るとその生物差が全く話題にされず、詭弁に聞こえます。
遺伝子解析が進んだ現在、一億年前に遡ると人間と犬は同じ先祖に行き当たることが判明していますが、これを”近い”と見るか”遠い”と見るか・・・。
専門家の中でも意見は分かれますが、マウスと人間の遺伝子差を考えると、犬と人間のそれが遠いとは思えません。
あえて感情的な親近感を排除しても、近しい仲間であるのは間違いないと思います。
(続く⇒②リン酸塩の種類)